Little AngelPretty devil 
      〜ルイヒル年の差パラレル 番外編

     “春は名のみと言いますが…”
 


暦の上では…なんてな言いようがありますが、
あれってじゃあ、それをこそ生活の上で用いていた頃だったら、
ちゃんと季節の巡りに合致してたんだろか。
諸説あって、2カ月近くズレていたとするのへ合わせるならば、
何とか丁度よかったりもするのですが、
カレンダーにある“旧暦”とやらへ置き換えても、
結構、まだ寒いのに…という節季になってたりするもんで。

 「まあ、希望的観測ってのも織り込まれてんのかも知れないし。」
 「そういうもので良いのでしょうか。」

天文学や、そこから割り出される暦は、
そのまま人々の生活を支える大事な情報なのであり。
殊に、種蒔きだの田植えだのという農作への目安にもなっているのだ、
そういうものなんてお軽い良いようで片付けてはいけないんじゃあと、
相変わらず生真面目な書生くんが、
ちょこっと上目遣いにお師匠様へと言いつのれば、

 「その大きい眸で睨み上げるのはやめんか。」
 「に、睨んでませんて。///////」

呪われまではせんでも祟られそうでおっかない…なんて、
冗談まじりに くすすと微笑うところが、
こちらさんも相変わらず、人を煙に撒くのがお上手な、
お館様こと、神祗官補佐様だったりするのだが。

 「そんなもん知るかって、けんもほろろじゃねぇのは、
  あいつにしちゃあ結構な進歩だがな。」

陽射しこそ明るいが、まだ少々風は冷たいのでと、
ふかふかな毛並みも温かいくうちゃんを懐ろに抱えたまんま、
炭櫃のそばにおいでのお師匠様に言われ。
庫裏まで かき餅を取りに来た瀬那くんへ。
今日は朝から何処ぞかへお出掛けだったらしい葉柱が、
お廊下の闇だまりから
すうと滲み出すように姿を現して見せる。

 「あ。お帰りなさいませ。」

はにゃんと笑う幼い笑顔の温度へこそ、
こちらもぬくくなったのか。
男臭い風貌を精悍にほころばせ、
笑い返した黒の侍従殿。

 「昔は喧嘩腰でしか物が言えなかった奴だからな。」
 「えー、そうなんですか?」

意外そうな声が帰って来たのこそ意外だと、
おやというお顔を振り向けたれば、

 「確かにあのその、お師匠様は、
  辛辣だし容赦が無いし、おっかないなと思いはしますが、」

あやや偉そうだったかなと、そんな風に感じたらしく、
少々焦りもってのセナくんが言うことにゃ、

 「後で判るんですけれど、
  やらかしたら失態の後始末とか、
  ちゃんと手を尽くしてて下さっていて。」

それに、おっかない怒り方をなさるのは、
お師匠様しか叱れない種類のことばっかですし、と。
さすが、こちらさんも成長してのことか、
そこのところには気がついてましたからと、
はにゃんと微笑ったお顔の、何とも温かだったのが印象的で。

 “……弟子にも恵まれてやがんのな。”

日頃の行いが悪すぎても、こういう御利益はあるのかねぇと。
それこそ本心からは思っても無かろうこと、
胸のうちにて呟いた、蜥蜴の一門の総帥様。
まだまだ凍るように冷たい風も吹きますが、
陽の明るさが増しているのは、春へと向けての前進の証し。
ウグイスも初音を聞かせているこのごろ、
早く暖かくなるといいですねと、
椿の茂みから小さな鳥が
キチチッと鳴きながら飛び立った
早春の明るい昼下がりの一景でございます。





   〜Fine〜  13.01.25.


  *今日は朝より昼のほうが気温が低いそうですね。
   日本海側は大雪だそうで、
   受験生の皆様も、どうかご自愛くださいませね。


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